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保育者人生の分岐点①
【辞める? 辞めない?】

2023.03.02

人それぞれに訪れる、保育者としての人生の分岐点。
「もう辞めようかな」という迷いに、当事者、同僚、園長、養成校講師……と、いろいろな立場を経験してきた大澤洋美先生が答えます。

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辞める、辞めないの分岐点

 いまは養成校で保育者の卵を育てていますが、5年前にこの立場になるまで、保育現場で30年、保育者として働いていました。最後の7年は、園長として複数の園を渡り歩いていて、辞めていく職員を見送る立場でもありました。
 そんな私自身、新人、中堅、管理職、どの立場のときも、そのときどきの事情で、「辞めるかどうか」の分岐点に立つことがありました。
 最後の分岐点は、園長になったとき。自分で言うのもなんですが、わりと抜けているタイプで……、園長という責務をこなす自信は全くなく、年齢的にも、家庭のことが忙しい時期で、両立への不安も大きかったんですね。
 そんな私に、当時の先輩がくれたのが、『もう無理だと思ったときに読む本』。著名な人の名言や勇気の出る言葉がたくさん載っている本だったと記憶しています。
 「きっと、たくさん悩むから。頑張りなさい。私にはもう必要ないから」という、かっこよすぎる!言葉とともにもらったその本。そこに書かれている内容より、その本をもらったこと自体に背中を押されたのを覚えています。
 私からすると、その先輩は完璧で、迷うことなんか一切なさそうな人。そんな先輩でも、「もう無理〜」なんて思うこともあったのね……と、ものすごく心が軽くなりました。
 自分の悩みを分かってくれている人がいること、自分以外のあの人も同じように悩んでいる(悩んでいた)と知ることが、ときに大きな心の支えになり、迷いを払しょくしてくれることがあるのだと思います。

お話:大澤洋美

東京成徳短期大学教授

約30年にわたり東京都で保育に従事。幼稚園・こども園の園長を経て現職。『保護者の質問 こたえ方BOOK』『3・4・5歳児の心Q&A』(Gakken)ほか著書多数。

イラスト:北野有

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